グラフィック実績
雪月風花 福智院
今高野山の参道に佇む宿坊「雪月風花 福智院」のリーフレット制作を担当しました。本案件では、施設を単なる案内対象としてではなく、「時間を過ごす場所」として伝えることを目的に、構造設計からビジュアル表現まで一貫して設計しています。
一般的なリーフレットでは、施設情報やメニューなどの機能的な情報が中心となりがちですが、本制作ではそのアプローチを転換。紙面を読む行為そのものを、参道を進み、のれんをくぐり、空間へと入っていく体験に重ねることで、「訪れる前に体験が始まる」構造を目指しました。
構造面では、蛇腹折りを採用。めくる動作に時間の流れを持たせることで、外から内へと意識が移り変わる感覚を紙面上で再現しています。外面は白を基調とした余白から始まり、春夏秋冬の風景を縦に連続させることで、現実から福智院の世界へと入っていく導入を設計。そこに「霞・翠・錦・冴」といった一字の表現を添え、説明ではなく象徴として季節の層を提示しています。
中面では、滞在する時間そのものを主題とし、「空間」と「食」の断片を組み合わせて構成。大きな写真と小さな写真のリズムによって視線の流れと奥行きを生み出し、障子越しの光や庭の気配といった空間の余白を取り込んでいます。また、あえて白いフレームを残すことで、外面の風景と重なり合い、外の自然と内の時間が層として感じられる設計としました。
さらに、外面の季節表現と中面のメニュー配置を連動させることで、紙面を透かした際に情景が重なって見える仕掛けも実装。視覚的な体験だけでなく、触れることで気づく構造を取り入れています。
情報量はあえて最小限に抑え、日本語を主軸とした静かな情報設計とすることで、空間の質や滞在の余韻を損なわないバランスを追求しました。
「場所を紹介する」のではなく、「過ごす時間を伝える」こと。
本リーフレットは、紙という媒体を通じて体験の導線を設計した制作事例です。