グラフィック実績
西日本旅客鉄道株式会社中国統括本部/株式会社JR西日本コミュニケーションズ中国支社
真っ白な仮囲いを「魅せる仮囲い」へ。――広島駅南口の大規模工事期間中、延長数十〜百メートル級の壁面を「歩いて読むメディア」として活用。広島の歴史・文化・産業をテーマに、来訪者と地域をつなぐ恒常的な情報発信の場をデザインしました。壁面いっぱいのタイポグラフィ、図版、写真を用いてストーリーを展開し、工事現場の負の印象を街の魅力再発見へと転換するシリーズです。
◎コンセプト
被爆75年という節目に、広島が「立ち上がる力」で都市を再生してきた実証の記録を、駅前という最も開かれた公共空間で共有する。1945–2020の年表で「都市の復興」を俯瞰し、1945–1958を7つのテーマに分解して“希望の芽生え→生活の復旧→文化・スポーツの再興→平和への祈り”へとつながる回復のプロセスを視覚化。コロナ禍で先行きが見えない時期に、歴史に触れること自体をエンパワメントと捉え、「過去の事実が、現在の私たちを励ます」というレジリエンスの物語を届けました。駅動線に沿う長大な壁面は、滞留せず読み進められるタイポ量・写真サイズ・章立てを設計。歩行速度と視認距離を想定し、見出し階層と色面で、歩き読みのリズムをつくりました。
◎仕様 高さ約2.5m × 全長約110m
◎掲示 2020年7月~2021年2月
◎受賞 第42回(2021)広島広告企画制作賞 屋外広告部門 金賞
◎主な内容 年表(1945–2020)/7テーマ(再生の灯・守るべき笑顔・未来の担い手・市民球団の誕生・活力の連鎖・平和への願い・ハレの祈り)
◎コンセプト
駅前で出会う「文化としての日本酒」。単なる銘柄紹介ではなく、風土(テロワール)・技術・人の三層で広島の酒を再定義する。かつて劣等酒と呼ばれた時代を、三浦仙三郎(軟水醸造法)・佐竹利市(竪型精米機)・橋爪陽(試験場初代場長)らの革新が覆し、銘醸地へと押し上げたブレークスルーの系譜を駅前から発信。コロナ禍で“語り合う場”が減った時期に、蔵元の言葉と杜氏15名の肖像を掲げ、つくり手の誇りと杯を交わす喜びを可視化しました。さらに酒蔵マップと40銘柄の巨大ビジュアルで「選ぶ楽しさ」を演出し、来訪者の心理導線を「知る→惹かれる→飲む」に設計。公共空間×ローカル産業の新しい結節点として、駅から地域消費へ回遊を促しました。
◎仕様 高さ約2.5m × 全長約98m
◎掲示 2020年11月~2021年5月
◎主な内容 先人3名紹介/大正期の醸造工程図/日本酒基礎知識/杜氏15名紹介(広島杜氏組合協力)/酒蔵マップ&銘柄40種/「広島の酒で乾杯」投稿展示
◎コンセプト
「する・見る・支える」の三位一体で、スポーツがもたらすウェルビーイングを街全体に拡張する。コロナ禍で活動や観戦の機会が制限される中でも、プレーの爽快感・達成感、応援の一体感、支える誇りを想起させるポジティブな体験回路を駅前で再点火。市内82のスポーツ少年団を網羅的に掲出し、「自分ごとにできる入口」を多数用意。背景を広島全域を模したスタジアム・ビジュアルで統一し、世界で戦う広島出身アスリート9名を象徴的に配置して、子どもから大人までのロールモデルの連鎖をデザイン。動線上の高さ・角度・視距離を考慮し、被写体のスケールと見出しのジャンプ率で高揚感のグラデーションを設計しました。
◎仕様 高さ約2.4m × 全長約42m
◎掲示 2022年1月~2022年7月
◎主な内容 市内スポーツ少年団82チーム紹介/広島出身・世界で活躍したアスリート9名紹介
◎コンセプト
駅という「都市の食卓」で、生産地と生活者を直結する。世界情勢による供給不安や自給率の課題を背景に、広島の多彩な自然環境(瀬戸内の海〜中国山地の山間部)が育む食材、作り手、現場、物語を一次情報と写真で提示。「買う前に、まず知る」「知れば、選びが変わる」という態度変容を目指し、MAPで俯瞰→現場を知る→つくり手を知る→物語を知る、の4段階で構成。色面と紙面比率の変化で歩行者の視線誘導を設計し、立ち止まった人向けに文量を段階的に増やす読みの階層を用意。駅前から地域の生産・消費へと回路をつなぎ、「美味しい未来」をともにつくる共感のインフラを可視化しました。
◎仕様 高さ約2.4m × 全長約45m
◎掲示 2022年11月~2023年5月
◎受賞 第44回(2023)広島広告企画制作賞 屋外広告部門 金賞
◎主な内容 広島県食材MAP/現場を知る/つくり手を知る/物語を知る
◎コンセプト
中四国No.1の工業出荷額を支える「広島のものづくり」を、歴史=土壌/技術=蓄積/精神=推進力として分解し、江戸の手工業から近代産業、戦禍と復興、軍需から民需への転換までを連続する物語として描く。熊野筆・針・宮島細工など伝統工芸と、世界シェアを持つ先端技術の両輪を「開拓・移住・復興」の精神でつなぎ、フロンティア・チャレンジのDNAを駅前で体感化。時代区分ごとに色面と資料図版の密度を変え、「歩けば時代が進む」時間軸の体験を設計。焼け野原からの再起と技術継承を、比喩に頼らず史実で示し、広島の生産力を誇りと実感の両面で伝えました。
◎仕様 高さ約2.4m × 全長約30m
◎掲示 2023年12月~2024年2月
◎主な内容 (1)江戸〜明治初中期:家内工業・手工業の発展/(2)明治後期〜大正中期:近代産業化/(3)大正後期〜昭和初期:都市近代化/(4)戦時:統制と軍需化/(5)戦災と復興/(6)民需転換と新たな挑戦